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【ガォアッ!】
鴨頭の妖魔は、一声の叫びを上げるとガクリと膝を尽き、床に倒れ伏した。
『や…やったのか?』
油断をした所に「アサメイ・ビーナス」の、緑の霊光刃にみぞおちを貫かれ、更には龍神さんの赤い雷光で全身…体の中に至るまで焼かれた筈だ、少なくとも相当な深手を負わせたと思う。
俺は倒れた妖魔から目を離さないまま、蟹のように横歩きしながら、床に倒れた霧島さんに近寄って声をかけた。
『霧島さん、霧島さん大丈夫ですか?』
軽く揺すってみると「ううん…」と、小さく唸りながら、目を開き、ゆっくりと身を起こした。
『……あ、き…木村君!怪我は大丈夫なの?!』
俺を見た途端、急に目の焦点が合わさり、慌てたように俺の傷について聞いてくる、こちらとしては、倒れたままだった霧島さんの容体の方が気になるのだが…
『シルバーリングの「防護」があったから、切られた「痛み」はあったけど、それだけだったし、さほど問題ないよ』
『そう…良かった』
「ほっ」と息をつきながら、霧島さんは安堵の表情をした。
『それより、霧島さんの方こそ大丈夫なのかい?蹴られてから、全然起きないし』
『あ、…うん、ちょっと気を失ってたみたい、でも大丈夫だよ』
『なら良かった、で…動ける?』
『うん』
霧島さんは頷くと、すっくと立ち上がった、どうやら本当に妖魔の攻撃によるダメージは、大したこと無かったらしい。
『木村君、妖魔はどうしたの?』
『そこに転がって……ん?』
霧島さんの問いに、俺は先ほど妖魔が倒れた場所へと顔を向けた …だが、そこには黒く焼かれた妖魔の姿は無かった。
『な、まさか…あの状態でも生きてたのか?』
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