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生首の黒豚…
【ギャハははは!!】
黒豚の頭部のみの妖魔は、甲高い笑い声を上げると、黒澤を目掛けて突進してきた。
『くうっ』
黒澤は素早く横っ飛びに動いて、黒豚の妖魔の突進から逃れる、格闘技術こそ学んではいないが、元から身体能力に優れた彼女は、その攻撃に反応して避ける事が出来た。
ドォォォォ!!
なびく黒髪を千切る勢いで、黒澤の横を飛び抜けた黒豚の妖魔は、そのままベッドをすり抜け壁にぶつかり、これまた通り抜けて行った。
『ちっ!速い!』
一方、攻撃を仕掛けようとしていた山辺であったが、黒豚の妖魔の余りの速さに、聖別したトランプを投げようと構えるも、投げるタイミングを失い、舌打ちをした。
『山辺さんは綾埼さんと、おばさんを守って下さい、あの妖魔は私が何とか…』
と、黒澤が山辺に指示を出し、言い終わる前に再び壁をすり抜けてきた黒豚の妖魔が、黒澤目掛けて突撃してきた。
『きゃあっ!』
さすが壁から突然現れた黒豚の妖魔の攻撃は避けられず、反射的に腕を上げてガードしたものの、殆どまともに体当たりを食らわされて、数メートルほど床を滑る。
『黒澤部長!…てめぇ、調子に乗るなよ』
山辺は今度こそ、黒豚の妖魔にトランプを投げ放つ。
シャッ!!……カッ!
動きを止めていた黒豚の妖魔に、トランプが突き刺さる…が、それだけであった。
『な…に?』
山辺はその光景を前に、多少の驚愕を露わにした表情をしたまま固まった。
【下らんな、グフフフ…こんなので、傷を付けられると思ったのか?】
黒豚の妖魔は嘲りの笑みを浮かべながら、山辺を一瞥した。
『そうかい?…じゃあ、こっちはどうだよ!!』
山辺は右手を上着のポケットに入れて、中にある「ヘマタイトボール」を取り出…そうとした瞬間、黒豚の妖魔は勢いをつけて突進してきた。
『どわっ!』
山辺は顔をひきつらせながら、とっさに逃げようとした、だが、自分の後ろに未だ意識を取り戻さず、ベットに眠ったままの綾埼加奈が居るのを思い出し、足を止めた。
ドカァッ!
『があぁっ!』
その為、黒豚の妖魔の突進を避けられず、山辺は後ろに突き飛ばされ、ベットに寝ていた綾埼にぶつかり、そのまま彼女と一緒にベットの反対側へと転がり落ちた。
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