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『もう、加奈ちゃんは何をしてるんだろう?』
霧島沙耶は病室から出て「赤い靄」に満ちた廊下を歩きながら、そう独語をした。
綾崎加奈は、大きい鞄…個人の荷物が2つ、オカルト研究部の備品が入った荷物を1つ、計3つもの荷物を藪崎に押し付け、自らは自分の荷物と、飲み物やお菓子が入ったビニール袋しか持たなかった、その程度の荷物ならば霧島を追い抜いて、病室へ先にたどり着いてもおかしくは無い、なのに霧島が倉庫を出て、荷物の重たさ故に、のたのたと亀のように歩き、病室に荷物を置いて出てくるまで、全く姿を現さなかった。
だいたい経過した時間は…往復した今の時点で、少なくとも5~6分…もしかすると10分くらいは経っているかもしれなかった、ただ201号室から倉庫に行き、扉の前でUターンして病室に戻るならば約1分程度…そこから考えると、明らかに時間がかかりすぎている。
『まさか、何かあったのかな…』
今のところ、先ほど倒した「妖魔」の仲間らしき化け物は現れてはいないが、自分が倉庫を出てから、新たに現れた妖魔に、2人が襲われた可能性は十分にありえる、だが、それなら荷物を運んでいる最中、後方から叫び声とか、戦いの音が聞こえてくる筈…だけど、それらしいものは一切聞こえてはこなかった。
カチャン…
『?』
ドアが開かれた音が、前方から小さく聞こえてきたので、霧島は立ち止まって「赤い靄」の向こうに意識を向けた、濃密な靄…しかも「赤」と言う「色」がある為に、なおさら視界が悪く、幾らか離れると誰が誰だか判らなくなる程、そんな状態なので誰かは判別は出来ないが、中から人が出てくるのは見える。
(加奈ちゃんかな?それとも藪崎さん?)
霧島は目を凝らして、中から出てくる相手が誰なのかを見続けた、仮に妖魔や悪霊であれば、迂闊に声をかけるのは危険だからだ。
『よっ…と、ふう…腕力が無いのは、こういう時に厳しい』
背中を向けたまま、中腰で廊下に出てきた相手は、何かを引っ張るようにしている。
(…………?)
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