侵入

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侵入

ゥゥゥウゥオォォォン…………………… 遠くで獣が吠えるような音が聞こえてくる、だがそれ以外の音は聞こえず、そして何も見るべきものは無かった、俺は今、周りが赤く…ヌルりとした雰囲気を持つ、不気味な「道」を歩いている、自分の歩く地面が何で出来ているのか…スリッパで踏みしめた感触からすると、何かの「肉」のようでもあり、柔らかい「腐葉土」の上を歩いているような感じもある、そんな気味の悪い「道」を歩いていた。 『何…ここは』 とにかく「赤い」としか言いようの無い視界の中、唯一異なる緑色の「光」を放つ「アサメイ・オブ・ビーナス」を見ながら独り言を話す、いや…正確には独り言とは言わないかもしれない、何故なら… (「異界化」された中に、さらに創られた「異界」との狭間であろう、問題は無い、直ぐに向こう側へ行ける) 右手に握られたナイフ…「アサメイ・オブ・ビーナス」には、俺が自宅の祭壇にて祀っている「龍神符」に繋がる龍神の「分霊」が宿っている、普段は何も会話する事が出来ないが、今のように「異界化」したような異常は場所、霊場のように相当に濃密な霊気に満ちた所でなら、霊感0の俺にも「龍神の分霊」と会話する事が「一応」は可能なのだ。 『そうは言っても、10分くらい歩いるけど?』 俺は腕時計を見ながら「アサメイ・ビーナス」に話しかける、「ここ」に入った時間を見ていなかったので正確ではないが、それくらいは歩き続けているはずだ。 (時間の概念は捨て去れ、異界と化した場所で、現実の時間感覚など殆ど無いに等しい) 『つまりはあれですか、数キロを数分で移動したとか…そう言う奇談と同じ話?』 (そうだ) 『なるほど』
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