第一章 陰陽力使い

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人の姿を視界にとらえた妖怪はボンネットに飛び乗った。 女性は突然のことに驚き、身動き一つすることができない。 妖怪は涎を垂らして彼女を見つめる。 とうとう我慢ができなくなったのか、フロントガラスに牙をぶつけ始めた。 「嫌、やめて!」 女性が恐怖で顔を歪める。 牙を何度もぶつけ続ける妖怪の勢いはとまらない。フロントガラスには着々とひびが入り、割れ目が広がっていく。 「誰か助けて!」 女性が必死に大声を出す。 だがここは人通りが少ない場所なので、その声に答える者はいない。 妖怪が大きく頭を振り動かし、割れ目に牙を刺す。次いで、乱暴に引き抜いた。
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