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途端に大きな音を立てて、フロントガラスが割れ女性の顔に降り注いだ。
ガラスの破片から顔面を守るためにとっさに腕で庇う。
女性は死を覚悟した。
「妖怪さん、か弱い女性を苛めるのはだめだよ」
唐突に現れた少女が身の丈程ある杖を横に払う。すると、輪が互いにこすれ合い高く澄んだ音が鳴り響く。
妖怪は体勢を崩し地面に倒れた。
車のライトが照らし出す少女は、現代に不似合いな狩衣を着ていて、腰まである髪を紐で縛っている。
手に持つ杖の先端には鋭い刃がついており、近くには円形の飾りが施されていた。
さらに円の中には、小さい輪が左右に三つずつついている。少女が持つ杖は、まるで三蔵法師が持つ錫杖(シャクジョウ)とよく似ていた。
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