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「怪我はないわね」
「……はい」
「それはよかった」
そういって、少女が女性の額に杖を向けた。
「え……!?」
未だに運転席に座っていた女性は杖を向けられて驚く。
「大丈夫。すぐ終わるから」
女性を安心させるように笑みを浮かべ、少女は冬の気を呼ぶ。
「漂う冬の気よ、この者の余分な記憶を消せ。そして、深い眠りを与えるのだ」
杖が白い光を放つ。その光が弾けて消えた途端に、女性の身体は力が抜けたように後方へ倒れた。
運転席で眠る女性を見て首を縦に振る。
「これでよし」
少女は女性が目撃した妖怪の記憶と、自身と関わった記憶を消したのだ。
もう二度と今日の出来事を思い出すことはないだろう。
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