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6月2日
私が実家に帰ってきて3カ月がたった。
成人したというのに、部屋は両親と共同、厳しい家柄。
友達に家の愚痴を言う度に、古臭いと言われる
自分でも思っているから、否定することもないけれど。
そんな私の生活は今日、変わる。
両親の部屋の奥に新しく自分の部屋を作ったからだった
この年にしての新しい自分だけの部屋は、檻にしか見えない。
どこへも行かないように、
離れていかないように、
この家の檻
「…ちゃん?葉月ちゃん?どうしたの?ぼーっとして」
「あ、ううん。なんでもないよ。」
新しい部屋、
新しい仕事場、
そして、新しい住人――小田有紗(おだ・ありさ)
彼女の両親がこの部屋を作り上げ、良くしてくれた恩を返すという理由で、今預かっている
両親の中では恩としてとっているが、私はそうではなかった
有紗の境遇が自分と似ていて、ただ、傍に居たかっただけだった
有紗は不登校児の引き籠り
「あははー!葉月ちゃん今すんごく変な顔してるー!!」
「してませんー。一生懸命お仕事してるのー」
机に向かって作業をする私を覗きこんでくる
「お仕事かー。ゲームにみえるよ?」
「…資料だよ。仕事仕事。参考参考。」
嘘だーなんて明るく笑う有紗は、とても学校でイジメを受けているようには見えなかった。
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