思い出したくはない

4/13
前へ
/18ページ
次へ
朝練を終えて、教室に入る 教室は嫌だった 美咲とも元とも、他の仲の良いみんなと離れ離れだから 嫌だった 一人だった 授業はつまらないし、わからないし だからって楽しい話しができる相手もいない 同じ部活の子は、一人だけいた 「ねー葉月やるよね?」 昼休み 郁(いく)が私の元に寄ってきて、突然誘ってくる 「何を?」 「合唱の伴奏。 だって葉月、副部長でしょ?それくらいできないとさー恥なんじゃないの?」 正直、郁のことは嫌いだ。 言い方も、考え方も絶対合わないなって、 初めて会った時から思っていた だから私はあまり関わろうとしないし、これ以上壊されたくなかった 適当にあしらって、授業が始まって 私は授業も聞かず、ノートのしたにルーズリーフを敷いて、いつものように書き始める 私の中にある物語 所謂小説だった 書き始めたのは小学6年生 始めはマンガ家になりたかったけれど、友達に 「絵が下手だから無理だよ」 といわれ、諦めた。 そこに、美咲が言ってきたんだ 「だったら小説にすればいいじゃん」 そこから私は時間がある時、授業中にコソコソと書き溜めている 今書いているのは、郁に頼まれた、郁が主人公の物語 始めはノリ気じゃなかったけれど、郁を"郁"と思わなければ、楽しくなっていった 私にとって教室は別の世界の入り口 部室は自分のたった一つの居場所だった
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加