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「……最近、少ないよな」
一月程経ったある日、カンカン照りの太陽にさらされる屋上を眺めながら、ひんやりとした階段に座って郁哉は呟くように言った。
「そうね……それが呼び出した理由?」
「うん…? ああ」
終業式の後、屋上の階段の所に来て欲しい。と、郁哉が玖未を呼んだのだった。
「いや、何か嫌な予感するんだよな」
「どうして? 鬼が一月出ない事なんて結構、良くある事よ」
「ああ………でも、出ない。と、言うのとは種類が違う気がするんだ」
「どういう意味」
「……この間、擦れ違った人間から、鬼の気配がした。昼間だったし、本当に微かなんだけど」
「鬼が……人間? 確かに強力な鬼はそれくらい出来るかも知れないわね。人語を操る知性を取り戻した個体も見た事はあるし…」
「狂化してる個体より、一度自己を取り戻しても鬼でいる個体のが力は強力だし、そういう月鬼は鬼を率いる力を持つし。宗呪クラスなら人にも影響を持つ位の支配性がある」
「……つまり、強力な個体が鬼を集めてると」
「うん。あれは大鬼のクラスかな……吸血衝動も弱くなるし、解呪師のおかげで半年以上、鬼として生きる個体も少ないから滅多に見ない個体だし……俺が勝てる相手じゃないから…放置した」
「それで、私に協力を…ね……」
玖未は少し、考える素振りをして、
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