嵐の前

3/4
前へ
/41ページ
次へ
「ねぇ、少し訊きたいんだけど、大鬼って呼ばれる位の力を得るには何年位必要なの?」 「うん? 個体の適性と、吸血量やらによるけど………大体、二年位かな。そこまで放置されてるなんてあんまり考えられないけど…」 「…二年……ね」 玖未の顔が硬く、張り詰めたモノになる。 「……どうした?」 異変に気が付いた郁哉が心配そうに問う。 「…ううん……こっちの話……何かね、郁哉が私の知らない事まで知ってるから驚いただけ」 「……ん? …ああ、師匠に習った」 「そういえば、あの小刀も師匠からだっけ?」 「小刀っか、刀子な。大差無いけど……」 「あの術式、禊には無い術式なのよ」 「あーだろうな。禊の関係じゃ無いからな」 「……? だって、解呪式を使えるのはウチだけよ」 「いや、師匠は解呪式を研究して、自分で導いたらしい。ベースは禊の式らしいけど…」 「……そんな人間がいるなんて……」 前代未聞。と言った顔をする彼女に対して、 「まぁ、眉唾みたいな話だと思ったけど、一応、使えてるしね……」 と彼は刀子を出して、紋様を眺める。 「…刀子、貸して貰える? 研究したい」 「駄目」 「……っく」 研究意欲の塊に化した、玖未に対して、郁哉は 「とりあえず、捜してくれ。気配も薄いし、見付けるのは大変だろうけど…明日になったらヤバいかも知れない」 「……うん」 玖未は頷いた。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加