嵐の前

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* ――…二年…… 玖未は眉を寄せて、机に頬杖をついていた。 「……まさか、ね」 自分の中に浮かぶ一つの可能性を打ち消す。二年前に負った傷が疼く。 「……」 ぎゅっと玖未は小壜を握り締める。 携帯が鳴った……届いたメールを見る。 『そろそろ行く』 無題のメールにはそうぶっきらぼうに書いてある。 ――よし、行かなきゃ。 彼女は立ち上がり、伸びをする。嫌な予感を払うように 「うん…、今日も頑張るぞー!!」 虚勢をはって、それから家を出た。 一方、郁哉は沈み始める太陽に照らされる道を俯きがちに歩いていた。アスファルトに残る昼間の熱と、蜩の声が本格的な夏の到来を告げている。 「……」 郁哉がふいに立ち止まり、面を上げる。蒼い瞳が鳥居を見て、木々の間に抜ける階段を見る。 「此処…か」 躊躇し、それから登っていく。その手は刀子を握っている。 気配に従い、彼は背後を貫く。額を刺された月鬼が崩れるのを避けつつ、前から来る一匹を貫く。月雫を採取する余裕が無い。 ――当たり。 左から来た鬼を動呪で止め、それから左の鬼の額を貫く……月鬼を次々と倒して、前方に進み、祠の前の少し開けた場所に出る。 「……」 郁哉は硬直した。指を一本たりとも動かせない。睨み付ける先にいるのは… 「お疲れ様」 とても、楽しそうに嗤う蒼い眼の少女だった。
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