憎悪

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――…っ。 玖未は家を出た瞬間に強力な気配を感じて、くらりとする。 「いつの間に……こんな………」 玖未が気配が濃い方へと、走り出す。 「……日和稲荷」 鳥居の中へ駆け込む。 「……待ってた」 郁哉が険しい顔をして、階段の上の方にいた。 「……はぁはぁ…郁哉」 「雑魚は倒したから、息を整えて」 「……う、うん」 上がりきった息を整え、玖未は上を見る。青い光が見えた気がしたが、気のせいのようだ。と階段を登る。 「上にいる」 「うん…」 玖未に従う形で、郁哉が登り辿り着いた祠の前……そこには誰もいなかった。 「……え?」 玖未が殺気を感じて前に飛ぶ。彼女の心臓の位置に刃はあった。 「…いく…や…」 蒼い瞳に戸惑うように玖未が呟く。 「……殺ス」 虚ろな呟き。 「……っ」 地面を蹴り、郁哉が急迫してくる。 ――鬼に? 後ろに飛びながら 「動呪」 を放つ。郁哉の動きが瞬間停止するも、無理矢理、足を動かして郁哉が一歩前に出る。 ――甘い…。 「縛呪。急々如律令」 郁哉が再び停止する。 「呪式呪……っ…!」 額に手を伸ばした所で撥ね飛ばされる。 「……くっ」 木にぶつかり、呼吸が止まる。意識が点滅し、くらくらして立てない。 ガサッ 「お疲れ様でした。彼女を抑えてて」 聞き覚えのある声に、玖未の心臓が、止まりそうになる。 「…は…晴(はる)……」 茫然と呟く彼女を郁哉が、人形にでもなったように後ろから腕を抑えて、玖未を締める。 「お久しぶり…玖未ちゃん。ふふ。気分はどう?」 遠退きそうな意識を無理矢理引き留めて、前を見ると中性的な、服装の少女がいた。玖未の古傷がちりちりと痛む。忘れまいと眺め続けた写真に映る少女と同じ少女……砂原 晴。
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