憎悪

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冷たい蒼の瞳を玖未は唇を噛んで、睨み付ける。 「…くすっ……」 晴は笑うと玖未の頬を触れた。首に鋭い爪が当たり、白い柔肌に紅い一筋の線が浮かぶ。 「貴女には絶望して貰わなきゃ。二度と立ち上がれない位に」 「……」 「簡単には殺さない……あの時、チャンスだったのに…貴女がそれを奪ったの…私が救われる機会を…赦さない……」 「……」 玖未の眼の奥が揺れ、項垂れるように俯く。 「ま、良いわ。御祓君、彼女を半殺しにして…あ、出来る限り痛め付けてね」 背後で頷く気配。玖未は息を吐き眼を閉じ、これから襲うであろう痛みに意識を向ける。腕にもどかしい位ゆっくりに痛みが走る。 「…郁哉……」 止めて…という、言葉を飲む。多分、今、何をしているかの意識も無いであろう彼に何を言った所で晴の思うままだろう。 ――……あれ? 肩関節を抜かれると想像していたのに、力の割に痛みが少ない。感覚が麻痺したらしい。 「……っく」 痛みに近い呻き声が背後から聞こえた。 「郁哉?」 思わず問う。 「……ざけんなっ!!」 急に大声で郁哉が喚く。 「勝手に人を使いやがって。許さねー!」 肩が自由になる。晴の舌打ち。後ろから前に郁哉が出ていた。どことなくしていた物々しい空気が消えている。 「俺を操りやがって」 怒声を張り上げる郁哉に対し、 「……はぁ…折角の愉しみが台無しだわ…」 と晴が溜め息を吐く。 「……郁哉、これは私の戦いだから、邪魔しないで」 郁哉に冷たい声が浴びせられる。 「……玖未?」 「引っ込んでて。貴方じゃ晴に太刀打ち出来る訳が無いし、操られても困るの」 「……ああ…分かった」 郁哉の額に、冷や汗が浮かぶ。玖未から発せられる殺意は晴に向かっていた。 「……あの時、仕留め損ねたのはやっぱりミスだったみたいね」 「くす。本気で来るんだ。貴女のせいで、私はこんなになったのに…貴女のせいで救われる事もなくなったのに…」
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