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黒かった髪は白に染まり、目は青みを増す。牙が鋭くなり、角が生える。
「憎いのよ。貴女が」
「だから?」
呼応するように、晴が動き、玖未が印を組む。
「動呪」
瞬間動きが遅くなる。
「縛呪」
その爪が喉を貫通する寸前に動きを止めてかわす。
「一の鎖、不馬率(うまひきいず)」
晴の左手が止まる。
「二の鎖、不刀斬(かたなきらず)」
再び繰り出された右手の爪が玖未の目前で止まる。
「三、四の鎖、不歩知(あるくをしらず)」
晴の動きが全て完全に停止する。
「五の鎖、不心動(こころうごかず)……不の五鎖呪」
そのまま前のめりに晴が倒れる。
「……はぁはぁ…」
精神力をごっそり抜かれたような感覚。足元がふらつく…玖未はやっとの事で倒れる晴の元に近付いて、額に触れる。
「呪式呪解」
晴の額から月雫が浮かぶ。それを小壜で受ける。
「………」
月雫の代わりのように玖未の頬から雫が落ちて、晴の額を濡らした。
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