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そこは紅い赤い部屋だった。 質素な中に華やかさを匂わす茶室…だが、その畳は血に染まり、床の間では花瓶が割れ、散らばった白い椿にすら紅が散っていて、その上の豪奢そうな掛軸も紅く染まっていて、元の絵が何なのか判らない程になっていて、今は物々しさと異様さが、そこを支配していた。 部屋の中心にはバラバラになった人間がいた。腕も足も心臓も切り離され、再び歪に繋ぎ合わされている。髪が拡がった状態の首もそのあるべき位置にあった。そんな歪な死体の傍らで、年端も行かない少年が血にまみれて、虚ろな目をして笑っていた。狂ってしまったかのように。妖しく光る蒼の双眸が月のような深さでぼんやりと見ていたが、やがて気が付いたかのように死体の首を見据える。 「ママ」 近付いて首をそっと抱える。それはそれは愛しそうに。少年の目から涙が零れた。それに拭われるように瞳の蒼が薄れ、黒に近づいていく。 少年は泣いていた。 笑いながら。
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