思い出

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「……玖未」 静かに泣いてる玖未の肩をそっと、郁哉が抱いた。 「……ん…大丈夫」 笑って見せる 「行こう」 と玖未が立つ。 「良いのか?」 「……うん」 ちらりと晴を見て、それから未練を断ち切るように玖未は頷く。 「……あ…ねぇ、郁哉、聞いて貰いたい話があるの」 「……うん?」 「郁哉の所って、両親は?」 「いないよ。お袋は大昔に死んでる。親父も…死んだも同然だよ」 けっ。と吐き捨てるように郁哉が言う。 「……あ…なんか……ごめん」 「別に。気にしてない。親父を思い出すと腸が煮えくり返りそうになる」 「……へ、へぇ……行っても良い?」 「別に構わないけど……お前、良いのか?」 「え?」 「いや…別に……構わないなら気にするな」 顔を赤くする郁哉に玖未は首を傾げた。 数分してマンションの一室に二人はいた。 「んで、聞かせたい話ってのは?」 コップに微糖と書かれたパックの珈琲を注いで、 「あ、後、牛乳いる?」 と聞く。玖未はテーブルの席に着いて硬直しつつ答える。 「要らない」 「そ」 出しかけた牛乳と、珈琲のパックを冷蔵庫にしまい、コップをテーブルに置いて向かいに座った。暫しの、沈黙…… 「……なんかモヤモヤしてて」 玖未は珈琲に口を付けてから切り出した。 「先刻の奴か? 知り合いみたいだったけど…」 「中学の時のクラスメイト…ううん。親友ね…」 「…ふぅん」 「晴はね、両親を憎んでたの…それは深く。中二の時に父親が再婚して、その相手からも父親からも暴力を振る舞われてたの……私は彼女の相談に乗ってた。彼女を救いたかった……」 玖未が上を向く。 「その頃からあの子は夜になると外を彷徨くようになった。鬼に襲われるから止めてと私が言っても聞かなかった。彼女は寧ろ、それを望んでいた。壊れてしまう事を……そして、私もそれが正しいような気がしてた…重い話を全て受け止めきれるような器ではなかった私も限界だったのね……。ある日、いつもの様に見回りに行くと彼女が襲われ、噛み付かれた所だった。私は彼女の解呪だけ躊躇ったの……その隙に逃げられてしまったのだけど…」 自嘲するように言って
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