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「私は彼女が両親の元に現れるのを確信していた。だから二人を別の場所へやって、私が防戦に回る事にした。彼女が両親を殺す姿が見たくなかったから……でも、そこで私は致命的な傷を負わされた。私の迷いが彼女の爪を届かせたのね……全治半年……治って退院した時には彼女も彼女の両親もいなくなっていた。私は彼女を憎んでしまっていた。きっかけとなった自分の行動も責めたけど、それ以上に憎かった。鬼化して自我の無い彼女を責めるのは筋違いなのに、私は烏滸がましくも恩を仇で返されたと感じていた……」
彼女はただ泣いていた。
「……エゴよね……こうして貴方に言うのも、どこかで自分に言い訳をするためなのかもね」
ポツリと玖未は郁哉に呟いた。
「…ま、良いんじゃないの? もう、自分もあの子も責めるなよ…終わったんだからさ」
とあっけらかんと郁哉は笑う。
「俺さ、死ぬまで罪ってものは背負うモノだと思ってる…でも、それに対して、自分を責めるのや他人を責めるのは間違いだと思うんだ。背負って、いかに先を見るかなんだと思う。その過ちを糧にして、二度と繰り返さずに生きる。生ききった先にだけ、救いがあるんだと思う」
彼の中に不思議なモノを感じて、思わず圧倒される。
「……まぁ、俺も完全には実行出来てないよ。なんだかんだで憎い奴はいるし……な」
苦笑いを浮かべつつ郁哉は言った。
「ふぅん」
と玖未が相槌を打つ。暫しの沈黙…。
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