戦慄

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ぼんやりと突っ立っている、ウィングにジルは視線を投げかけた。 「早く座って朝食を食べなさい」 「あっ、はい……」 母親の声にびくっと反応し、素早く椅子へ座す。 テーブルには鮮やかな野菜などが入るシチュー。真っ赤な苺ジャムが塗られたパン。オレンジジュースが置かれていた。 「あれ?父さんはどこ」 いつもはウィングよりも早くに座っている父親がいない。 「グレスは新聞を取りに行ったわ。そろそろ戻って来ると思うけど」 ジルが言い終えた丁度その時、音を立ててドアが開く。欠伸を噛み殺すグレスが姿を現した。片手には新聞を持っている。 「ウィング、お早うワン。今日は遅かったな」 「今、会話に動物語が交じっていたよね……」 「ああ、済まない。日頃から動物と接していると、つい口にしてしまうんだ」 グレスの仕事は獣医師で動物の病気や怪我を診察したり、治療するのが仕事だ。口にしてしまうのは確かに仕方ない。
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