戦慄

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グレスは動物の病気と怪我を治療する前に、必ず自身の力を使い動物と話す。 例えば猫なら猫語、犬なら犬語を駆使して話すのだ。当然、ウィングには猫語も犬語も分からない。 単に動物と仲良くなり、心を開いて貰う為で父曰く心を知る事が重要らしい。 グレスが動物と話している声は、本物の鳴き声と同じである。 楽しそうに話す様を目の当たりすると不思議に思えてしまう。 ウィングはパンを頬張ったまま話し出す。 「どんな……記事が、載っていた…の?」 「ウィング。話すか、食べるか、どちらかにしなさい」 やわりと息子を窘めて「今から見る所だ」と述べた。 新聞を広げたグレスの顔が一瞬にして氷ついた。瞬きが止まり動きも止まっている。 現実を信じたくない、受け入れたくないと表情が言っていた。 父親の異様な様子に気づき少年は新聞を覗く。その記事を見て寒気立ち顔が一気に強張る。 〝首相暗殺事件〟の記事が新聞一面を堂々と飾っていたからだ。 「二人共、どうしたの?」 訝しげに尋ねたジルも内容を見てしまい、血の気がどんどん引いていく。
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