1、学年一位

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その時だった。 ざわ… だだっ広いまだペンキの匂いが残っていそうな新しい体育館内に、生徒達(※特に男子)から軽いどよめきが起こった。 そこでハッと半分意識を取り戻す俺。 自分の足をシューズで思いっきり踏みつけ、意識を保つ。 どうやら式は俺が必死で睡魔と闘っている間に新任教諭達の紹介に移ったようだ。 拍手を受けながら、二人の若い男女が壇上に上がる。 壇上にはまだ若い20代前半と思われる男がマイクの角度を神経質に直しながら、生徒達にたどたどしい挨拶をしている。 数学の新任教師で、今年某有名国立大の教育学部を卒業したばかりのまさにピカピカの社会人一年生らしい。 この風乃学園は、教員就職試験がかなり厳しい事でも有名な所だ。 教職員の入れ替えは滅多に行わず、世間で言われる“超一流大学”を出た者だけを雇い、立派な教育者として育成する。 そうゆう方針らしい。 それだからこそ、高等部からの編入は一切無く、超一流大学への進学率が群を抜いて高いのだ。 極めて優秀な教師達に長い伝統ある学園。 そして自由で清新な校風に都内有数の高い進学率。 不景気などどこ吹く風。 恐らく、この学園があと三十年は経営破綻する事はないだろう。
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