1、学年一位

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……が今、目の前の壇上にいる(俺の席は壇上に一番近い斜め右の席)緊張のせいで顔色が真っ青な、冷や汗が止まらない定池という若い男は、とても厳しい教員試験ををくぐり抜けた人間には見えない。(第一あの国立大卒業に見えない) ………まぁ、人は見掛けによらないって事だ。 いや今はどうでもいい。そんな事は物凄くどうでもいい。 それより問題はその隣にいる女。 定池(珍しい名字だな)という男と同じく年は20代前半から後半。 清楚・清潔の手本みたいな真っ白なスーツに膝丈の真っ白いスカート。 靴のヒールはそれほど高くなく、色素の薄い焦げ茶色っぽい髪を一つに後ろで綺麗に束ね、耳には小さな青い石(サファイアか?)のイヤリング。たどたどしく、噛みまくりの定池の挨拶をた斜め後ろで聞きながら、たおやかな笑みを浮かべている。 …………社長秘書。 そう、まさに二時間ドラマに出てきそうな社長秘書だ。 その場合99%の確率で社長の愛人だが。 ……いや社長秘書ではない。ここは会社ではない…………なら校長秘書か?理事長秘書? ………そんなもんあるか。 でもほんとサスペンスドラマによくある 美人秘書!愛と憎悪渦巻く陰謀!届かなかったダイイング・メッセージ!とかなんちゃらとかにマジで出てきそう… 要するにかなりの美人だ。 この空間にいる大多数の人間がそう思っただろう。 でも俺の目から見た彼女の顔は、笑っているのは確かなんだろうけど、それは優しいのか恐いのかよく分からない不思議な笑みに見えた。 とにかくこの女が校長愛人(なんじゃそりゃ)とかでないのなら新任教師ということに……… ………漫画だな。 ほらなんとか○ンデー(俺は殆ど漫画を読んだことがないので曖昧だが)とかの少年漫画によく出てくるらしい美人教師みたいなやつ。 まさに、それだ。
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