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「──はぁ。まんまとやられた。だよなぁ、そんなウマイ話があるわけないよなぁ」
そうつぶやく彼の名前は、碓井司(ウスイツカサ)。
この春から晴れて大学生になったばかりだ。柔らかそうなブラウンの髪、グレーがかったライトブラウンの瞳がトレードマークである。
そんな彼にはここ最近、大きな悩み事が出来てしまった。
それは、従兄弟である神塚伊織(カミツカイオリ)と、二人だけの生活が突如として始まってしまったことにある。
伊織は漆黒の髪に、漆黒の瞳の持ち主で、男にしておくのが勿体無いくらいの端正な顔立ちだ。モデルと言っても通るだろう。
大学の女友達には羨ましがられるのだが、それはとんでもない間違いである。
何をさせてもほぼ完璧な伊織の、唯一の弱点。それは家事だった。苦手というより、やらせられないと言った方が正しいかもしれない。
なぜなら、料理をさせようものらキッチンを丸焼きにしてしまいかねず、掃除洗濯を任せると家中が台風一過のような有り様になってしまう。
本人にやる気はあるのだが、これではとてもではないが危なくて敵わない。そうなると、必然的に家事全般は司が担当せざるをえないのだ。
男の二人暮らしなのだから、家事など適当で良いと思うのだが、とにかく伊織の散らかし具合が半端ではなく酷い。
放っておくと、司の感覚で堪えられる状態を大きく逸脱してしまうのであった。
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