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放課後、部活動に向かう生徒や
友人と娯楽を楽しみに行く者達を
尻目に由祢は足早に寮に帰っていた。
「…っはぁー」
制服のままベッドへ豪快にダイブする。
ふかふかの布団に体が沈み込んで行く
感覚が心地よくそのまま目を瞑った。
「(…あたしの才能は錆び付かない、?)」
「(錆び付く物が無いよ華ちゃん。)」
「(あたしがならなくても、調律師は、いっぱい、)」
どんどん否定的な考えに陥っていることに
気付いて急いで思考を停止する。
このことは考えても切りがないのだ。
「ううぅ……」
「なんだよ元気ねぇなぁ。
せっかく来てやったっていうのに。
あと前来たときも言ったが
鍵はちゃんと閉めとけ。
いつ何が起こるか分かんねぇんだから。」
聞き慣れた声に体を素早く起こし振り向く。
どこか目元や雰囲気が清志に
似ている青年が部屋の入口に立っていた。
「よっ。たいして久し振り、でもねぇか。」
「麻希(まき)兄!!」
由祢の顔が綻びる。
彼は逢沢敬志の息子で由祢の従兄弟にあたる
逢沢麻希だった。
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