tune3.

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「…ぶはっ!な、お前!ジャックか!」 「わぉん!」 顔面にしがみつく白いものを 引きはがした麻希はその姿を見て嬉しそうに笑った。 名を呼ばれた白い子犬もまた嬉しそうに鳴く。 子犬は麻希の両手から逃れ床に着地すると 麻希の右足に緩く噛み付いた。 「あでででで何しやがる!」 「ジャックも久し振りに麻希さんと 遊びてぇんだってさ!」 「オレらにも話し聞かせてくださいよっ!!」 2人の少年に腕を引かれ、麻希は由祢の部屋から 飛び出してしまった。 「わりぃ!由祢!あとでな!」 抗う事に無駄を感じた麻希が 由祢へと叫びそのまま少年達に連行されていく。 「ごっ……ごめんなさい……」 取り残された少女は由祢に深く一礼すると 小走りで少年達の後を追う。 まるで嵐のように現れ、去って行った 彼らに唖然としつつ由祢はしゃがみ込む。 「何ていうんだっけ… 今日の授業で言ってたな、これ。」 従兄弟、麻希と会うのは別に久しぶりではないが 彼女なりに話したい事や聞きたい事は たくさん思い付いていたのだ。 だが、いきなり現れた同じ寮内の少年少女に 麻希は連行され――――― 「あ、肩透かし?」 ぼつねんとしゃがみ込む由祢の声が 静かな部屋に響いた。
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