tune3.

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「(あたしと麻希兄達はともかく…… あの人達自身はどう思ってるんだろ。 実家を離れて、いつ死ぬかも 分からないような仕事をするなんて。)」 詳しく聞いた事はないが、少なくとも 麻希達はこの仕事に誇りを持っていたし 気に入っていたような気がする。 それに、自分らのチューンパートナーを あの2人はとても大切にしていた。 と、いうか 可愛がっていた。 「(あ、絶対そっちだ。 調律師やらざるをえないんだ、あの兄弟。)」 調律師でない者が、調律をすることは 基本禁じられている。 つまり、調律師ではないものが 意図的にチューンパートナーを出す事は 禁じられているということだ。 これは調律の本来の目的が見失われ、 その力が戦争や軍事に利用される事を 防ぐべく決められた事であるのだが、 自分らのチューンパートナーを 人一倍可愛がる彼らにとって 調律を禁じられる事自体が 辛抱し難いことなのであった。 「(調律師じゃない麻希兄達なんて 想像出来ないなぁ……)」 調律を禁じられ悶え悲しむだろう 従兄弟2人の姿を想像し、 思わず肩を震わせ笑う。 「わ、やばい、シワになる!」 肩を震わせた時に揺れたスカートで 自分が未だ制服姿であることに気付いた。 着替えるべく すっくと立ち上がり 「あだだだだだ。」 そして突如走った足の激しい痺れに耐えられず 情けなくべちょりと床に倒れこむのであった。
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