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振り返ると私服になったさっきの女がいた。
「何であたしがクビなのぉ!? やっと短期のバイト見付けたのにぃ!」
地団駄を踏み、地面に苛立ちをぶつけている。
「あの馬と鹿の所為だぁ! 馬め! 鹿め! もうあんな奴ら馬鹿だーー!!」
意味不明な叫びをする女。
さっきは帽子を被って髪を結っていたが、今は柔らかな髪を揺らして怒り狂っている。
大きな黒目がちな瞳はメラメラと燃えていて、小さな鼻を膨らませ、ふっくらした唇を尖らせていた。
最後に地面を割りそうな勢いで足を踏み込むと、フンッと鼻を鳴らせて俯いたまま肩を怒らせてこちらに歩いて来る。
ズン、ズン、ズン……ドン!
「でっ!!」
真っ直ぐ進み俺の胸に頭突きした女は、カエルみたいな呻き声を漏らした。
女は驚いて顔を見上げる。
大きな瞳が俺を映していた。
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