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「ごごご……ごめんなさい!」
あんなにも怒っていたのに、見上げた顔は慌てた表情だけ。
吸い込まれそうな瞳を見ていたら、言葉を失ってしまった。
「あの……どこか痛いですか? ホントにごめんなさい!!」
心配そうに俺を見る。
俺はハッとして、言葉を取り戻した。
「や、平気。俺もボーッとしてたから」
避けようと思えば避けられたが、まさか本当にぶつかってくるとは思わず避けなかった俺にも非はある。
「良かったぁ」
パアッと明るい笑顔を向ける。
それから頭を下げて女は歩いて行った。
怒ったり、慌てたり、笑ったり。
目まぐるしく変わる表情が可愛いと思ってしまった。
「……あの女、面白ぇな」
名前は確か……『桐島蓮香』。
店長と最初に絡まれていた女が呼んでいたのを思い出し、知らず知らずに名前を脳に刻み込んでいた。
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