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桐島……蓮香!
俺は覚えのある名前に眼を丸くした。
もう会うこともないだろうと思っていた女の名前が出て、しかも許婚だと言うから驚きは隠せない。
「なっ、隼人。悪い話じゃないだろ?」
「…………」
親父のニヤつく顔を無視して考える。
桐島蓮香は面白そうな女だった。
退屈な毎日をアイツと過ごせば、少しは退屈じゃなくなるかも。
まぁ、もしも同姓同名の別人だったりしたら、帰ってこればいいだけの話だ。
「いいよ、行く。但し、その家に住む間は余計な干渉はするなよ。特に母さんには念押しといて」
せっかく家を出て自由を手に入れるのに、しょっちゅう顔見せろだとかは御免だ。
親父に釘を刺し、俺は早速引越しの準備に取り掛かった。
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