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「うはっ!俺様ピーンチ!」 戻ってきたフライングディスクをキャッチし、愛用のスピアを構えると音もなく身を隠した大木を滑り落ちる。 「だから言ったじゃない!なんでわざわざ潜入先で揉め事起こすのよ!?」 彼が装着している、通信機能付きのマスクに少女の怒った声が響く。 「人がやっとの思いで必死に欺瞞してるのに、なんでわざわざ実験場に寄り道して暴れてくるかな!?」 少女の声は怒りというよりも呆れ果てている。 「無理だってwww俺様あんな面白い獲物スルー出来るわけねーじゃんwww」 真剣な少女に対し、彼の言動は限りなく軽い。 「ま、俺ら狩猟民族にゃ、ここは魅力的過ぎるんだわ。あいつらヌルーして最深部まで到達出来るようなキ○ガイは…」 そこまで少女に返事を返すと、彼は顔をしかめる。 「いることはいるなぁ…」 問題はそいつが自分のことを徹底的に嫌っていることと、こんなことをしていることを死んでも知られたくないということだ。 「…あてがあるの?」 強がってはいるが、間違いなく不安でいっぱいな少女の声。 「んー…。あいつにやらせるか」 もう一人脳裏に浮かんだ同族の顔を思いだし、いつも脳天気な彼の顔に珍しく苦笑が浮かぶ。 「ちょっと!?また施設に戻る気!?って、それは使わないでって…!」 慌てる少女を無視し、肩に装着したプラズマキャノンを起動する。 「わりぃwwwちっと作戦変更wwwもちっと戦力削いでから出直すわwww」 以前この星を訪れた時に、彼の存在を臭いで追い回した犬、という生き物に似た生物は皆殺しにした。 が、ここの地球人どもは文明的にはかなり遅れているものの、光学迷彩を無効にするセンサー類の開発技術には長けている。 念のため器材を積んでいる車は破壊した方がいいだろう。 可能なら施設に戻って、少しでも自分のいた痕跡を消去したい。 「アリスっち、いまからちっと暴れっから、それダミーにしてデータのクランキング頼むわwww」 「ちょっ!なに勝手なこと…」 少女が抗議の声を上げた瞬間、プラズマキャノンの白い光跡が武装ジープに吸い込まれていった。
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