第一章

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僕は一番好きな食べ物 鶏のささみ にかぶりつこうと口を開けた時だった。 一瞬にしてささみが消えてしまった。 それも二つ同時に。 僕は目の前のささみを、灰色の物体がかすめて行くのみたんだ。 まるで疾風みたいだ。 僕は野良猫がかすめ取ったとかと思ったが、近所ではあんな灰色のネコは見かけないし、妙に丸っこい。 ささみをくわえて逃げ去ったあいつは、木の下の茂みに隠れている。 僕のつながれてる鎖がとどかないのを計算してるのだろう。 素早いだけじゃなく頭も良いみたいだ。 まだ子供とはいえ僕も犬だ、ネコに馬鹿にされたままじゃ犬のプライドが許さない。だって悔しいじゃないか。僕は相手はどんなヤツか気になった。 おい、姿をみせろ泥棒ネコ、犬の僕からささみを盗むなんていい度胸だな。 出てきて僕と勝負しろ。 僕はこのままじゃ負けたみたいに思われるのがしゃくで、アイツに吠えたんだ。 ずうたいばかりデカくってほんとのろまね。しかもネコに盗られたって思うなんて、いつもネコに馬鹿にされてるのかしら?アンタって駄目ね。 ほんとバカ。 ヤツは吠えてきた。 えっ!?犬? しかも女の子??
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