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「あっ痛てーぞ、マー子」
ユーキは、マー子を振り返りざま、大袈裟に痛がって見せ、それからニヤリと笑った。
「ユーキってば、声大きい。それにいい加減マー子って呼び方やめてよ」
「いいじゃん。マー子は今も昔もマー子だろ。」
意味のわからぬ言い訳だ、とマー子は内心呆れながらこの、のんきな幼馴染みを眺めた。
マー子とは、この幼馴染みが幼稚園児のときにつけたあだ名だ。
その頃の彼は女子の名前に○○ー子とつけて呼ぶのがマイブームだったのだ。
それが、今は本城真那に対してだけに使われている。最近では、ユーキの真似をしてマー子と呼ぶ人が増え、彼女は迷惑していた。
「あっこんちゃん、おはよ。」
マー子はユーキの傍らに立っていた少年に微笑みながら声をかけた。
こんちゃんとは、ユーキの友達、今野良介(こんのりょうすけ)のことで、口数は少ないが、やさしい少年だ。
「おはよう」
こんちゃんから返事がかえってくる。
「あれ、おれには、おはようなし?」
ユーキが二人の間に割り込む。
「え?さっきしなかった?頭をバシって。」
「うん。それ、挨拶じゃないからね」
悲しげな笑顔が、ユーキからもれた。
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