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「あー、それよりさ、今こんちゃんと、夏休みに海に行かないかって話してたんだ。
久し振りにとーちゃんが休みとってくれてさ、
ここから少し遠いけど、すっげえきれいな所なんだって。
だから、その…マー子もどうかなって。」
「…塾。」
「え?」
ユーキから間の抜けた返事が返ってきた。
それにムッとしながらマー子はもう一度、答えた。
「だから、毎日ほとんど塾があるの。だからいけない。」
言いながら、ランドセルからペンケースを取り出し、無造作に机の上に置いた。
「そう言えば本城さん、私立の中学行くんだよね。それで…」
少しばかり気を遣ったこんちゃんの言葉に、ユーキは納得した、と言うように一度頷いた。
それだけだった。
マー子は、素っ気ない言い方をしてしまった後で、後悔した。
しかしもう遅く、目の前にはいくらか小さくなってしまった背中があるだけだった。
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