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―――――――
私は、彼、桐谷 正谷を、殺しに来た
資料に目はとうしてあった
でも彼は、資料とは違っていた
彼は、一言で言って暗いイメージだと思っていた
でも、実際の彼は、違った
真っ直ぐで、優しい声、決して大きくないが頼れる背中…
彼は、私が殺しに来たって言っても、微動だにしなかった
落ち着いていた
予想と違い一瞬ぼ~っとなってしまった
彼の言葉は、毎回私の予想とは全く違った
最後の願いだって命乞いをすると思っていた
でも、彼は私の顔が見たいって言った
予想外の言葉に、私は思わず赤面してしまった
私は、彼の願いを、叶える事にした
この選択が私の人生を
大きく変えるとも知らずに……
彼がゆっくりと此方を向く
私と彼の視線が絡まる
彼は何も話さない
ただ、私を見つめている
私も彼を見つめる
決して美形では無い
でも、その時の彼は、他の誰より
綺麗で、逞しく見えた
私は彼を見つめている
彼も私を見つめている
静寂の中彼が口を開く
正「……綺麗だ」
死「えっ?」
彼に見とれていた私は、彼が放った言葉も耳に入らなかった
正「いや、何でも無い。有り難う、僕の我が儘を聞いてくれて、君になら殺されても良い」
あぁ、駄目だ……
私にこの人は、殺せない
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