濁り眼

予感

酪農大学で熊の研究に情熱を注ぐ男がいた

学者"五十嵐隆"は今年の異常に寒い夏 例年に無い危機感を感じていたのだ

若い研究員が部屋に入って来る

『先生の指摘が当たりましたよ…今年の寒さは28年前と、そっくりでした』

"五十嵐"がゆっくり呟く
『やはりな...山が荒れるぞ』

研究員がドサッと 28年前の熊被害を伝える新聞記事のコピーを置いた

『随分と荒れたんですね…』

"五十嵐"は意を決した様に研究員に指示を出した

『明日から初山別の山に生態調査に出る…役場に電話して腕のいいハンターを 一名用意して貰ってくれ!!』

研究員は そら来たと飽きれた顔である

『止めても無駄ですからね…気を付けてくださいよ』

『大丈夫だ無茶はしないよ』"五十嵐"が返す

『役場と連絡付きましたよ…"高桑健太"ってハンターが同行するそうです』

皮肉にも机の上に乗る28年前の記事 一番上には"高桑又一"の事件記事であった...