たらい回し

4/8
前へ
/45ページ
次へ
何を隠そう、その人も私を嫌っている人だ。 その人は若いながらに入社歴が長く、お局的な感じの人だ。 店長よりも長く居る為に、店長も頭が上がらない雰囲気はあった。 店長はその人と私が組むようにシフトを作っていたが その人はいつもツンツンしていて、私はその人が怖かった。 作業をしながら私を監視し、少しでもミスをするとまた怒鳴る。 そのうち『あなたの返事の仕方が気に入らないから何とかして』と言う始末。 『はい』という返事をどう何とかすればいいのだろう。 私は監視されている視線に緊張して、動作が遅くなり、やらないようなミスをする(現にその人が見てない時は手がスイスイ動く) 怒鳴られ、怒鳴られ、怒鳴られ… また怒鳴られやしないか。 またミスしたらどうしよう。 不安は指先を伝い、またミスを誘い続けた。 『向いてないんじゃない?他探せば?』 …………。 向いていないのではなく、あなたが怖いからだ。 そう言えないまま、私はまたも解雇となる。 しかし、解雇になって私はホッとしていた。 もう怒鳴られなくて済む……。 そればかりがタダ働きもしなくて済む、と。 私はこの仕事(制作)が遅かった。 だから通常より二時間早くきて、通常より一時間遅く帰る。 トータル三時間(酷くて四時間)の時間外労働だ。 だが 『あなたが遅いんだから、あなたの責任でしょ。嫌ならもっと早くやれば?』 という言葉と共に… 私は『通常時間分』でないとタイムカードを押させてもらえなかった。 早くやりたくても 萎縮する気持ち。 不安、畏れ、恐怖心。 先行し膨らみ続ける毎日… 挙げ句毎日三~四時間タダ働き。 そう…私は此処だけは 『クビになって良かった』 と思ったものだ。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加