零章「Prologue」

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そんな彼女がこの町を離れたのは二年前。 学期毎に実施されている身体検査で陽性反応が出た。 陽性反応、つまり彼女がAlbinoであると、判断されたのだ。 基本的にこの国では大学までの学生には全て、一年に数回、身体検査を受ける機会が与えられている。 そして、そこで陽性反応が出ると、ATIと呼ばれる帝都市にあるAlbino専門の学校で特殊能力について学ばなければならない。 しかし、彼女はATIに入って一年ほど経った時に、住んでいた寮から忽然(コツゼン)と姿を消してしまったのだ。 警察官やボランティア、ATI関係者などで捜索をしたが、結局手掛かりすら見つからず、今では数名のボランティアと真由の母である聖子(セイコ)さんが駅前でビラを配っている程度になってしまった。 大好きな姉の失踪。 それが家で独りでは過ごしたくない真由の理由なのだ。 そんな事を頭で考えてから柊は口を開く。 「じゃあ、適当に遊んで帰ろうか?なんなら夕飯も、うちで食べてけば良いし。」 「本当?ありがとう。助かるよぉ!」 真由が遊びに来てくれれば、妹の相手をさせられなくて済む。 真由の為ということもあるが、柊にはそういう打算的な考えもあった。 その後、少し真由と雑談を交わしていると、すぐにテストの時間へと突入した。
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