零章「Prologue」

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朝。 仕事や学校に向かう為に人々が動き出す。 ある人はバス停まで徒歩で、ある人は長距離移動の為、駅まで向かう。 子供達は元気いっぱいに徒歩で学校まで行くのだろう。 そんな人々が忙(セワ)しなく動き回る上空には空がある。 空には太陽や青空、白い雲といったイメージが一般的には付いているが、この空にはそんなに気持ちの良いイメージなどない。 空というキャンバスに白い絵の具を塗りつぶしたように、普段は青と呼ばれるところが全て白くにごっている。雲で覆われているわけではない。 したがって、太陽の光は正常に、地面や木々を燦々(サンサン)と照らしている。 目を凝らしてよく見ると空だけではなく、周囲の樹木や草花などの植物も、元々の色に白を混ぜたようなパステルカラーになっている。 どこかの学者が、当時はこんな事を言っていた。 「動植物には顕著に影響が出る」と。 全ての元凶であるその白には、名前がついていた。 〔Alby(アルビィ)〕 この名前が全世界中に知れ渡ったのは、今から二十七年前。 その当時、聞けば恐怖に怯え、悲しみ泣き崩れる。そんな恐ろしいものだった。 この三十年の間に世界は大きく動き、時代を急速に早めた。 今では「近代史」として高校の授業にも組み込まれているほどだ。
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