零章「Prologue」

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教科書を閉じ、早歩きで青年に近づくと無言で手帳を奪い、すぐさま鞄の中へとしまう。 そして、再び前を向き閉じた教科書を開いて、 「拾ってくれてありがとう。どうせなら普通に渡してくれたら助かったんだけどね。」 目の前の動きに呆然としていた青年だが、自分の手から手帳が取られているのを確認すると、教科書を開いた青年の横に並び、くねくねと身体をくねらせて話す。 「もう相変わらず柊は冷たいんだからぁ!」 当然相手にはされない事を分かっているのか、返事が無いことも気にせずに彼が持っている教科書に目をやり言葉を続ける。 「何々?近代史の勉強? 俺も昨日の夜やろうと思ったんだけど、新作ゲームが通信で届いちゃってさぁ! もう徹夜でレベル上げ!数学も近代史も爆死決定!」 それを聞いた柊は溜息を吐くと、再び教科書を閉じて、代わりに口を開いた。 「……健二?ゲームの話はテストの後にしてくれない? 俺は今、補習にならないように少しでも頭に詰め込んでるんだから!」 「補習が怖くてゲームが出来るかっての!」 健二は柊の言葉にそう返すと、閉じたばかりの教科書を奪い、開いて言った。 「よし、じゃあ、俺が問題出してやるよ! 緑ヶ谷研究所の計画が発表された年と研究所が完成した年と研究所が爆発事故を起こした年を全部答えろ!」 柊は眉を顰(シカ)め顎に右手を当てて考える。
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