第1章  半年遅れの参加

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一手先を進んでいる俺は足払いによる体の回転を止めなかった。 スキル「ハイリカバリング」。 これは先程のリカバリングの上位スキル、体勢を立て直すのではなく、体勢を崩さずに維持するスキルである。 それによって俺は幅30cmの鉄骨の上でも思い切って動くことが出来た。 勢いのついた回転に乗じに、俺は右手を大きく振りかぶった。 まるで円盤投げのような姿勢だ。 すると振り回した右手が通るであろう軌道上に日本刀が出現する。 それは鞘に納められているわけでなく、刀身がそのまま出ている抜き身の状態だった。 何もなかったはずの空間に突如刀が現れたわけだが、俺は何も驚かない。 柄は金の装飾が入った深緑色、刀身は輝くようなライムグリーンの愛刀、翠桜を俺は回転速度を落とさずに握ろうとする。 タイミング、空間座標。 全てが完璧に合わさり、俺は最高の条件下で翠桜を握りしめる。 ちょうど男はこの時体勢を立て直し終えていた。 そのため、急に目の前に現れた日本刀による斬撃回避、またはスキルによる緊急回避を行う余裕などあるはずがない。 無防備の男に俺は刃を立てる。 鮮血が周囲に飛び散り、何かが宙を舞った。 月光に照らされた男の頭部はそのまま闇の地面へと落下していった。 それに遅れて頭部を失った男の体は崩れ落ちるように鉄骨の上に倒れ込んだ。 僅か30cmの鉄骨の上にこれほど大きな男の体がきれいにバランスを保っているのは奇妙に思える。 出血は激しく、大量の血液が鉄骨から滴れ落ちていた。 一瞬で絶滅、男は自分が死んだということが理解できていないかもしれない。 そんな中、突然男の体から淡い青色をした光の珠が飛び出してきた。 それは眩いほどの光を放ちながら俺の胸元に近づいてくる。そして光の珠はゆっくりと俺の体内に吸収されていった。 この光の珠こそ俺が追い求めてきたもの、『ディバイン』である。 そしてこれを求め、神に挑む悪ふざけにてこの上なくはた迷惑なあ戦い。 それがGCG―God Choice Game ―。
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