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気がつけば、考え込んでいたみたいで、イオがじっと椎名を見つめている。
椎名は、その瞳を見つめ返す。
心を見透かす、翡翠の瞳は、透き通り神秘的だった。
イオは、王の気持ちがわかるのだろうか。だとしたらーー。
「ふーん」
椎名はあれと思う。いつもなら、椎名が考えていることに対して、あれこれ言うのだが、珍しく何も返ってこない。
椎名は首を傾げたものの、気まぐれなイオのことだ、その話題には興味なかったのだろうと、深く考えるのは止めた。
イオは、食事は止めたらしく、残りの大半を椎名に押し付けてきた。
食が細いのか、イオときたら朝夕問わず、食べ残すことが多い。
そのため体型も華奢で、綺麗に整った顔や白い肌から、女の子でも通じそうだった。
むっと、イオが眉をしかめた。
「シーナこそ肉を胸に回さないと、中肉の男になるだろ」
「遠回しに貧乳と言ってますよねー。もう、そこから離れて下さい。イオ様こそ食が細すぎです。背が、伸びませんよ」
お返しだと、意地悪く微笑む。
彼の年齢にしたら低くはないのだが、兄と比べるとだいぶ差が出てしまい、イオ本人も気にしている。
睨まれた。
「食べたらどうです? せめて食べかけたのだけでも」
「いらない」
身長は気にしているが、意欲的に食べる気はないらしい。
椎名は肩を竦める。
「そうですか。なら、私が頂きますね」
バスケットの中身を取り出す。自分は食べない割に、イオの持ってきた朝食は多すぎるくらいの量だった。
リアンナがお茶の準備をする。
本来、ちゃんとした食事の場で食べなければならないのだが、あの広い場で一人で食事というのは寂しすぎるため、リアンナには目を瞑ってもらっている。
イサナも同席しないし、他の妻たちも自室でとっているようなので。
そそくさ自分の食事を終えたイオだが、今日はどうやら公務に戻らず、椎名が食べるそばにいるようだ。
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