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しばらくイオの頭を撫でていたら、調子にのったイオが、距離を縮めてくる。
お互いの目にお互いの瞳が映る。
椎名は少し身体を引いた。
イオの懐き方は犬猫に似ている。
「誰が犬猫だ」
「懐くと寄ってくる感じが、まんま犬猫なんですよ」
「俺は犬猫じゃない」
イオは身体を離した。
金色の髪が椎名の指をすり抜け、透明な音を立てた。
肩に届くまでは長くないものの、耳にかかる長さの髪は、外交官用の黒い服と合わさって、目立つ。
性格から、犬猫よりも、ライオンが合っているかもしれない。犬より猫っぽい。でも、犬っぽくもある。
「シーナ」
嫌がるイオに構わず、犬猫でたとえていたら、イオが臍を曲げそうなので、仕方なく止めた。
「じゃあ、ベッドに潜り込んだり、鼻がくっつきそうなほど、近づくのは止めて下さいね」
「それとこれは話が別だろ」
「あら。そういうところが犬猫みたいなんですよねー」
口には出さないが、可愛いのだ。
悪意はなくても、可愛いと言われて喜ぶイオではなかった。
椎名を睨んでいる。
どうやら、調子が戻ったようだ。
「ほら。お仕事に行ってらっしゃい」
笑んでみせる椎名に、イオはくすっと笑った。
「シーナの旦那か、俺は」
「ふざけてないで、行ってらっしゃい」
手をひらひら振り、イオは長い裾をひらめかせ、椎名に背を向けた。
すれ違いで、リアンナが入ってくる。
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