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 あの短時間でよく準備したものだ。  小花の散った白いクロスのかかったテーブルに、バスケットの中身が、お皿に移され、用意されていた。  場所が変われば雰囲気も変わる。 「リアンナ、ありがとうございます」  引いてくれた椅子に座り、椎名は湯気立つティーカップを受け取る。芳醇な紅茶の香りを十分味わい、口をつける。  椎名のいた世界と同じ味がする。  アールヴェースの衣食住文化は、古代ヨーロッパ辺りのものに似ている。昔(ざっと十年以上前)、習った歴史の教科書に載っていた物に似た物を見かけた。  椎名が紅茶を二口飲んだところで。 「イオ様に近づかないで下さいっ」  リアンナが唐突に声を上げた。 「いきなりどうしたんですか?」  ティーカップをソーサーに戻し、椎名はリアンナを見上げた。  彼女は、ようやく言えたといった感じで、頬を紅潮させていた。 「陛下の妃なのに! イオ様とばかり関わっていたら、その内……っ」  リアンナが声を詰まらせた。  彼女の言いたいことはよくわかる。 「私とイオ様は悪いことなんて、企んでいないんですけど。そうは言っても、笑って流せる地位じゃないんですよねー」 「わかっているなら、お止め下さいっ! イオ様と関わっていたら、王妃さまが陛下から顰蹙(ひんしゅく)を買ってしまいますっ! 考えてみて下さい、自分の妻が自分の弟と親密だったら、どうか」 「うーん」 「嫌に決まっているじゃないですかっ」  かっとリアンナは目を見開くが、椎名はいまいちしっくりとこなかった。  イサナに顰蹙を買うほど、椎名は彼に気に入られていないだろう。むしろ、椎名のことなど忘れていそうである。  実際、一カ月放置されている。  もし、彼が椎名をよく思っていないなら、直接的に行動を起こす。  イサナはそういう人間だ。
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