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イサナが椎名に関心を向けるとしたら、椎名がイオと共謀して王位略奪を謀ったり、自由奔放にし過ぎてお叱りを受ける時だろうと、椎名は予測している。
今のところ後者が危ない。
(イオ様と関わっていることは、何も言ってこないので、いいですよねー)
客観的なのだか、主観的なのだか、椎名はある意味達観していた。
「何というかですね。正直陛下と距離をはかりかねてます」
イサナが椎名に興味ないなら、椎名も興味はあっても、率先してイサナに関わっていこうとは思っていない。
良く言えばお互い自由奔放。
悪く言えばお互い干渉しない。
それがリアンナに叱られるところなのだが。
一応夫婦だが、異世界から来た椎名には、貴族の娘たちのような実家の意向も関係ない、世継ぎ問題も他に七十一人も王妃がいるのだから、彼女にとっては差し当たって問題でない。
リアンナは椎名のやる気のなさに、やる気を殺がれるどころか、燃えている。
「距離は縮めて下さいっ!! 椎名様は王妃さまなんですよっ! もっと陛下のご寵愛を得たいと思わないんですかっ」
思わないと言ったら、リアンナに絞め殺されそうである。
椎名は首を捻った。
「うーん。陛下は素敵な方ですから、私には勿体無いですよ。ええ」
「王妃さまっ!!」
「じ、尽力はします」
マイペースな椎名も、リアンナの勢いにたじたじ。
椎名は座っているため、リアンナが大きく威圧的に見える。本来、主人を見下ろすなど不敬だが。
リアンナは怒りやら何やらで、そういったことが頭から飛んでいた。途中、はっとしたようで、青ざめた。
当の椎名は気にしていなかった。
「ご寵愛はいらないですが。陛下の助けにはなりたいですよ」
社交辞令でなく、本音である。
椎名を召喚したのがたとえアールヴェース側であって、いきなり結婚させられてしまっても、ぞんざいに扱われてはいない。
三食屋根付き破格の待遇である。
「元の世界に戻れないとなると、こちらでお世話になりますしねー」
社会人だった椎名には、働かざるもの食うべからず信念が強い。
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