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大学を卒業し、三年。
勉強とはおさらばと、思っていた椎名には思わぬアクシデントだった。
集中力はあるが、自分なりの勉強スタイルが出来てしまっていて、異世界の勉強スタイルはいまいち慣れないのだ。
「マーサさん。スパルタなんですよね」
「スパルタ?」
「厳しいってことです。私、勉強も仕事ものんびりやってきたものですから」
自分のペースで迷惑をかけない程度にやってきた。
マーサは、一気に自分の教えたいことを椎名に詰め込み、その後、実践する椎名を叱咤する。
今のところ褒められたことはない。
礼儀作法は椎名も自信がない。
「何言ってるんですっ。マーサ様は王妃様をたいそう気に入ってましたよ!」
リアンナが息巻く。
「そうですかねー」
椎名はマーサのスパルタ教育を思い返し、首を捻った。
気に入られているのか、怪しい。
飴と鞭なら、飴0.1に鞭9.9だ。
マーサの礼儀作法の授業をうけた後は、筋肉痛に悩まされる。スパルタなのもあるが。礼儀作法なのに、筋肉痛とは、椎名も年を取ったなと感慨深く思う。
「まあ。努力しますね」
「頑張って下さい!」
当の本人より、リアンナがやる気があるのもどうだかと思うが、椎名は頷く。
「ささ、食べて下さい」
リアンナが、体力をつけろとばかりに椎名に料理を勧める。
お城の料理は絶品で、つい食べてしまい、体重が気になるところなのだが。
マーサに搾られるからいいか。
椎名は料理を胃袋に収める作業に集中することにした。
ものの見事に、バスケットを空にして、イオの食べ残しはどうしようか悩んでいたら、お茶を注いでいたリアンナに取り上げられた。
「はしたないですっ」
「食べませんよー」
そこまで食い意地張ってない。
椎名は、食事を下げて貰った。リアンナが片付けている間、テラスから外を見渡す。
「……あら?」
椎名は目を凝らす。
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