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 イサナが疑るように、目を細めた。  そんな仕草をすると、益々兄弟瓜二つだと思った。  騙され、疑った、仕草だ。 「女なら誰もが、自分を一番大切にして欲しいものではないのか?」  王であるイサナの寵を得ようと争う女たちを、嫌になるくらい見てきた。  椎名が自分に謙虚なふりをし、取り入ろうとしているのではないか。  そんな考えが、イサナの頭を占める。  不意打ちで、鋭い眼差しを浴びた椎名は困ったように苦笑した。 「私はどちらかというと大切にしたい方です」  イサナの瞳が揺らぐ。  何を言っているのか、理解できないといった顔だった。 「男を大切にしたいということか?」  わざわざ聞き返してしまうほどに、イサナは椎名の応えに毒気を抜かれた。  椎名は応えあぐね首を傾けた。 「うーん。あ、ほら。好きになったり気に入ったりすれば自然に、大切にしたくなりますよね。それです」  子どもの頃に拾った、何でもない石ころ、ビー玉、蝉の抜け殻……、好きな人に貰ったぬいぐるみ。  椎名が思い出せる大切なものを口に出せば、イサナは何か思い出そうとし、止めた。 「そんなものはない」 「そうですか?」 「足を引っ張るようなものはいらない」  椎名は再度首を傾げた。 「じゃあ。陛下の大切なものはなんですか?」
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