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頭を抱えた俺を呼ぶ声がして、ため息を吐いた。
「ちょっと」
おいでおいでと、手招きされ、飛びかからんとする勢いでソファーへ突進。
座るこのひとに抱きつこうとして一瞬躊躇う。
「…なに?」
やや身体はのけ反りぎみだが、逃げずに俺を見る眼が瞬きする。
「く、臭くないかな」
「は?」
は?
は?って。
あなたがさっき言ったんですよね?
「臭いんでしょ?」
アレの匂いでしょ!?
つか、そんな匂いさせながらタクシーに乗ったり、スタッフと喋ったり、マネージャーとここまで並んで歩いたのか!?
「大丈夫」
「大丈夫じゃないよ」
「だから大丈夫だって」
「は?」
俺にしかわかんねえから。
こそ、と呟かれ、鼻の奥がジンと疼いた。
「やべ、鼻血出そう」
このひとこそ、色気ダダ漏れですから。
パクパクと鯉みたいに口を開け閉めする俺に、このひとはシレッとして。
「今日、仕事終わったらまた行くから」
「はい」
「ちゃんと待ってろよ」
そう言った後は破顔一笑。
ようやく、抱き締めさせてもらえたのでした。
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