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しばらくして鳴った玄関ドアのチャイムに、裸足でタタキに降りてドアを開けた。
「よお」
入って、と俺が促す前にさっさと靴を脱いで上がる後ろ姿を眼で追って。
「…それ、何で持ってんの?」
振り返ったあのひとが指差す物に気が付いた。
「え? あ、いや、これは」
思わず後ろに隠してから、ハタと思い当たりました。
「これ、あなただよね?」
昨日来たのはこのひとだけだし、その前に保管しておいたワインや焼酎は俺が飲み干した筈なんだから。
「あなたでしょ?」
「うん」
あっさり認められて、若干肩透かしをくらったような。
「で、でも何で…」
「引っ越し祝い」
「え?」
「だから」
被っていたキャップを外し、片手でぐしゃぐしゃと前髪をかき上げる。
スタスタと歩き出したこのひとの後に着いて、リビングに入り。
ソファーに座ったこのひとの目の前のテーブルに、持っていた瓶を置いた。
「あのさ…、俺、今猛烈にパニックなんだけど」
分かりますか?
テーブルを挟んで床に座った俺の必死さを察してください!
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