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「あなたさっきピンポン鳴らしたよね?」
頭に手をやったまま、俺を見る眼は思いがけずしっかりとして。
「なんでここの番号知ってたの?」
悪い事しました、とか。
悪戯が見つかった、とか。
そんな後ろ暗い思いなんて欠片も見付けられない。
だったら何だ?
「誰かに聞いた…?」
「んや」
やけにきっぱりと言い切るこのひとが、めちゃめちゃ謎なんですが!
「だ、だって」
「他人に、って意味ならだけど」
「え?」
言葉の意味をそのまま読み取れば、他人ではない人間には聞いた、と。
そういう事?
「他人じゃないって…、まさか親御さんじゃ」
バカな。
「バーカ、んなわけあるかよ」
「だ、だよね?」
じゃあ、一体。
「他人じゃないってのは、俺の事を色々知ってる人間だろ?」
分からねえの?なオーラがビシビシ感じられます。
「あいつら(メンバー)?」
首を振られ。
「事務所の上の人か!?」
苦笑され。
「後は…テレビのスタッフさん?」
今挙げた人間のうち、何人かには、俺の引っ越し先であるこのマンションは告知済みだ。
特に口止めしたわけではないので、このひとが知らされた可能性もあった、が。
「バーカ」
酷い言われようと、不満気に尖らせた唇に。
「あ」
ひらめいた。
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