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「私の部屋の押し入れ」とだけ書いてある手紙を握りしめて僕はその場を後にした。
有美の家に着き、お母様の了承を得て押入れを確認しに部屋にあがると、当時のまま片付けてなかった。
押入れをゆっくり開けると、そこにはみかんの箱が数箱置いてあった。
「有美が部屋はそのままにしておけってうるさくて、そのままにしておいたのよ」
背後からお母様の声が聞こえたが、僕は何の返答もせず、みかん箱を丁寧に開ける。
中には公園で飲んだみかんジュースの空き缶がびっしり日付入りで敷き詰められていた。
有美も同じこと考えてたんだなぁ……
僕がタイムカプセルに入れる物を「今、教えて」と今にこだわったのは、自分が死ぬのがわかっていたからなのかもしれない、と思った。
有美が、タイムカプセルに入れたのはただの封筒なんかじゃなく、自分がそこに存在していた証を詰め込んだのだ。
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